パワーストーンの真実。

舎人独言

健康&グルメに・・・ 翡翠 のパワー。

建築学概論 感想 解読

韓国映画「建築学概論」は初恋映画の傑作です。いや、初恋
ばかりでなく大人の男女のゲームのようで実は生涯を賭けた
「華麗なる賭け」(スティーヴ・マックィーン&フェイ・ダ
ナウェイ主演)や、別れるしかなかったけれど、それでも
ひとたび結ばれるしかなかった、どうしようもなく心が残る「追憶」
(バーブラ・ストライザンンド&ロバート・レドフォード主演)、
恋愛とは? 人生とは?と正解にたどりつきそうもない「ひまわり」、
若者のタンジュンな初恋ストーリーと思ったら、ジュヌヴィエーヴの
覚悟のこもった一言のセリフで本当の恋だったと信じさせる
「シェルブールの雨傘」といった傑作、オードリー・ヘプバーンの一
連の作品といった恋愛映画と肩を並べる正真正銘傑の傑作です。
ただ初恋というちょっと特殊で不器用な状況が描かれただけで。
15年も人生の底流で途切れなく続いていた初恋は、ソヨンが
見上げる空へと昇華していくのです。

Epitone Project エピトーン・プロジェクトの first love(첫사랑) は、
スジがヒロインという点も含めて映画「建築学概論 건축학개론」そのまま。
そこで歌の翻訳の前にまず映画の感想・解読を。この歌の和訳は一番下で。

スンミンもソヨンも、上書きで初恋が消え去ることはなく、心の大事な片隅で小さな
フォルダーにして残していた、そんな映画なのだと、それぞれのシーンの心理を解き
明かしていきます。また「ひそかな視線」「たたく」といった共通項でシーンがつながる
見事な構成、そしてキスシーンの後でなにがあったか、なかったのか・・・
についても、このシーンの最後の映像の仕掛けに基づいて考察をちょっと^^とこ

수지(Suzy), 백현(BAEKHYUN)   Dream
2016年の大ヒット。EXO のベッキョンとデュエット。

「建築学概論」は韓国で初恋ブームをつくりましたが、納得の内容です。
「狭き門」や「ノルウェイの森」と同様、ちょっと複雑になったら誤解されがち
な、その典型かなぁ? 感想は十人十色でしょうが、このページでいくつかの新しい
視点・発見があれば、と願っています。その意味で、このページは「建築学概論」への
応援団です^^ 微力ながら可能な限り丁寧に取り上げ、ソヨンがレポートを一緒にする
のは公平と言った意味、ソヨンが酔ってスンミンをたたいた心理ほかをチェックします。
(これほどの傑作になるとネタバレなど関係ありません。追憶とか華麗なる賭けとか
オードリーの一連の傑作などと同じく、なんど見ても感動させられます^^)

スンミンがソヨンを見忘れてなどいないと、ソヨンの言葉を15年後、スンミンが
そのままの表現で繰り返すといった具体的な証拠ををあげるなどしています。
事の始まりから手放すまで15年がかかった勝者なきこの恋愛、それもピュアな
初恋の物語。バーブラ・ストライザンドの「追憶」、スティーヴ・マックィーンの
「華麗なる賭け」といった勝者なき恋愛の物語の系譜に、この「建築学概論」は
つらなっているのですね。いい感想を持てなかった方は、長い文章で恐縮ですが、
ご参考?までにお読みいただき、もう一度、愛すべきこの名作の世界に浸ってほしいナァ。

승민 スンミンも 서연 ソヨンも sの音を表音する「ㅅ」(シオッ) で
始まって nの音を示す「ㄴ」(ニウン) で終わっています。
パパゲーノとパパゲーナ(モーツァルトね^^)ほどでなくとも、それなりの共通項です。
名前などそれこそ パク・ボゴム でも キム・ユジョン でもなんでも、無数の名前
が可能性としてあるのに、わざわざ スンミン と ソヨン なのです。
少なくともその程度には縁=運命があるという設定なのではないでしょうか?
(この指摘は2022年10月26日現在、ネット上ではほかにないようです)、
ちなみに万葉集のことをカッコつけて マンニョウシュウ と読むことがありますが
奈良時代末期にはまだ日本語に ニウン の音があった証(あかし)です。

ネ、この映画は特にサピオロマンティック(Sapioromantic、相手の知性に性的魅力を感じる
セクシュアリティ)の傾向を持つ方にはアピールポイントがいっぱいです。

恋愛・性は、年齢によって意味合い・重みが違います。大学1年と35歳
(韓国の年齢は数え年。日本式では基本的にマイナス1)では、そこが違う
ということも大きな意味を持っています。

初恋ならではの受傷でした。でも結局この映画は初恋の物語ではなく
初恋がどのように過去のものとなっていったかまでを描く物語なのでしょう。
青春そのものを切り取った映画ではなく、35歳の大人が経験した初恋の物語。
MVのメイキング映像、映画の中で使われた重要な歌「記憶の習作」などもどうぞ^^。

しかし、この first love,、 こんな風に人を想ったこと、ありましたよね?^^
初恋の喜びにも、受傷にも、まさに初恋ならではの初々しさがあります。
そんな男の子の気分を描いた佳曲です。あ、女性の感慨だってあるか、やっぱ^^

김동률  キム・ドンリュル   다시 사랑한다 말할까(もう一度愛してるって言おうか)
キム・ドンリュルつながりで映画のシーンとこの曲がコラボしています。ついそんなことを勝手に
願ってしまうファンの気持ちは、よくわかります。やっぱり二人によりを戻してほしいんだよぉ^^

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Epitone Project 에피톤 프로젝트 の first love 첫사랑 のページです。
MVはもう映画「建築学概論」の世界そのまんま。
この映画で「国民の初恋」という自他ともに認めるタイトルを獲得したガールズグループ
Miss A の 배수지 ベ・スジ を起用したMVは、キャンパスも学生たちのファッションも
あの映画そのもの。カメラが重要な小道具となっていることも共通します。
と言うか、あの映画があって、そのコンセプトでこの曲が生まれたのかもしれません。
だから「建築学概論」外伝とかスピンオフじゃなくて、「建築学概論」補遺 ってところ?^^

片思いはそのまま失恋となるわけではありません。
その想いを手放して初めて、人は恋を失う、つまり失恋となるのです。
その意味では、ソヨンはゴミ捨て場から拾い出してきた模型を15年間ずっと
捨てることができずに持っていた。スンミンも展覧会のCDをなくさずに持って
いた。ソヨンの誕生日もずっと覚えていた。だから初恋は勝手に燃え広がらない
ように封印される一方で、少しだけ残って二人の心の片隅の小さな灯となって
残ってはいたのです。二人とも。
つまりスンミンもソヨンも、その後、それぞれいろいろあったかもしれないし、とくに
ソヨンは結婚までしていますから、恋愛の想い出は上書き保存されて、初恋などどこかへ
行ってしまっても不思議ではないのに、心のどこか・・・^^に小さな、密(ひそ)やかな
フォルダーとなって残されていたわけです。

ロマンティシズム華やかなりし19世紀、その精華であったご本家、バイロンは
Whate’er she loveth, so she loves thee not,
What can it profit thee ?
彼女が愛していようと あるいは お前を愛していまいと
それがお前に どんないいことがあり得るのか?
と書いています。この「お前」は、自分のことです。

ロマンティックって実はとてもキビシい道なのよ^^:
わたしが〇〇していたらうまくつきあえたのに、〇〇していたら
こんなことにならなかったのに。そんな風に想い悩み、自分を責め
あげく、たいていの人は、片思いは辛いばっかり、苦しくて悲しいから、
やーめた となって、それで失恋が確定となるのですが。
バイロンの詩とスンミンたちと共通するのは
たとえ相手がどんなふうに自分に対応しようと、自分の想いが消え去ったりはしなかった
ということです。(意識的に封印したけど、灯は消えさせてはいなかった。完全には)
二人は、バイロンほどに強い意識を持ってはいないでしょう。でも
そこを補うのが名前で見た通り、 縁 であり、生来の二人の素質なのです。

そしてエンディングでようやく、二人の初恋は息の根を止められるー-のではなく、
そんな激しさはないまま、自然に息遣いをやめるといったような、穏やかな姿で
立ち去っていくのです。多分、ソヨンが見上げたチェジュの高い空のかなたへと。
少なくともソヨンは。対照的に確認しないまま早合点していたスンミンの反省は
新婚の身の上となった今からが本番の試練のようで・・・^^:

大体、音楽専攻のソヨン(大学時代はべ・スジ)が建築学概論を取ってることが
ちょっと不自然。ソヨンが進学のためソウルに来て、父親の友人の家に住み始めた
町はスンミン(同イ・ジェフン)が生まれ育ち、今も住む町です。
だから町角とかで、そして大学でもソヨンはスンミンを見かけ、近づきたいと見つけた
接近可能な唯一の接点が、建築学概論という授業だったのかな? と想像できます。
履修表を提出する前に、ソヨンがスンミンを発見していたということになりますが。

エンディング近くのソヨンの涙のシーンを思うと、いつソヨンはスンミンを意識し始め
たのか、いつから初恋と思ったのか? という疑問はけっこう大きな意味があります。
そのナゾが 「先輩が目的で概論をとったの?」 というスンミンの疑問・質問に
つながります。でも、ソヨンがスンミンを発見して好きに・・・なんてシーンは描かれ
ません。もうスンミンが勝手にソヨンにお熱になっていくシーンばっかりです^^
もしソヨンがスンミンを見かけて、 いいな  なんて思ったシーンが実際にあったら
ストーリー全体の膨らみがずっと薄っぺらになってしまったのではないでしょうか?

それにソヨンの想いが最初という証拠めいたシーンとしては、教室に遅れて入ってきた
ソヨンが着席のために椅子を引く時、スンミンの座るほうを気にするようにチラ見し、
その直後にスンミンが後ろを振り返って気にしているシーンくらいなもの。
二人は視線を合わせていません。ここではまだ、何かがあるような、ないような段階?

IU   아이유   너의 의미

そしてソヨンのひそかなチラ見は次のバスの中のシーンにつながります。
共通項は「秘密の視線」。通学路線が同じで、バスの窓ガラスに映ったソヨン
をひそかに見続けるスンミン。と、ソヨンが、スンミンが自分を見ていることに気づき
わたしを見てたのね、といった雰囲気でソヨンが振り返ります。スンミンは
慌てて反対の方角を向き、バスの外を見るのですが、もう遅い。実際によくあるシーン
ですね。ジロジロ見られるのがいやなら、振り返ってキツくにらんで、あとは前を
向いてフンッて知らんぷりをすればいい。でも数秒間、見続けています。
ソヨンのその数秒の視線は、君がわたしに気があるのがわかったわ、と告げるメッセージ。
スンミンは自分の存在をソヨンに確認・認識してもらい、拒絶されなかったのでしょう。

当然、同じ停留所で降りるのですが、先に行くソヨンは、スンミンに後ろ姿を
見られているのを意識してか背中とか雰囲気が固くて、ちょっとぎごちない歩き方。
ナプトゥクが「スンミン!」と呼びかけるのを、彼の友だちなら興味があるから
チラッと、左を見て確認したようです。スンミンに見られるかもしれない。
だからスンミンに関心があるとバレないように、ほんのちょっとだけ。
大きな声だから普通にその方向を見ればいいのに、チラだからかえって不自然。

二人で空き家を見つけ、ソヨンはまず時計のネジを巻いて、この家の時間を現在形へと
よみがえらせます。そして一人で掃除をし、二人で訪れて植木鉢に花を植えるとき、
「先輩が目的で概論をとったの?」 というスンミンの問いに、イエス・ノーは答えず
ソヨンは「いけない?」と動機が不純と受け取られかねない部分を問題にします。なぜって
スンミンこそソヨンが概論をとったその目的だから、多分。学問とは無関係で不純?^^
(生活や思考法の隅々まで儒教の影響が根強い韓国社会では 名分 が常に問題視されます。
つまり学問的関心からでなく、誰かと接点を持ちたい理由で概論の授業を選択したなら
ソヨンは選択の名分を持っていない、と指摘されたように感じて、「いけない?」と
反論めいた言葉を発しているのでしょう。日本の感覚よりもちょっとキツめの反応です)

そして互いに一番気になること、相手につきあっている人はいないことを聞き出し
あっています。スンミンはおずおずと、ソヨンはスンミンに気があることがわかって
いるし、サークルでモテていることもあってアッサリと。恐れはほぼありません。
もっともスンミンはその前に、最も気になっていたパンストがソヨンのものでないか
確認して安心するために 「先輩の部屋に行ったことがある?」 と尋ねていますネ^^

(冒頭、強めのピー音があります) 展覧会  記憶の習作

“우리 첫눈 오는 날 그곳에서 만날래?”
「わたしたち 初雪が降る日 あの場所で会おうか?」
初雪の日に何をしてる?と最初に言葉に出して尋ねたのはスンミンです。
それを受けて会おうか? といい感じで約束を促したのはソヨン。
親指を合わせて拇印までしたのです。
ソヨンはニンマリと笑顔。そして停留所へ送ると言って一緒に歩いていた
目的を忘れて、一人歩き去ります。会う約束ができたから満足しちゃったのネ。
一方のスンミンときたら、約束できて、言い出した目的が達成できたから、
自分の部屋で小躍(おど)りならぬダンスをして喜んだのですが。
実はソヨンの手の平の上で踊っていたわけで^^

15年後に再会した後の校庭で、初雪の日に会おうと、どちらが先に言ったかが話題に
なっていますね。初めに初雪の日のことを口にしたのはスンミンです。
ソヨンは彼が何を言いたいのかピンときて、彼の願いをそのまま口にしただけなのです。
だから、ソヨンが、スンミンが先に言ったと主張するのも正しいのです。
約束を取り付けようとしたその言葉を自分が先に言ったんじゃない
というスンミンの理屈は論理的には正しいけど、本質的にはソヨンが勝ちです。
スンミンが初雪と言いだした気持ちを察して言ってあげただけなのですから。
この辺が男女の考え方の基本的に違う部分なのかな? 男は理路整然と整合性にこだわり
論理からはずれずに合理的に考えがち。すれ違いが基本と思って、まぁ間違いない。

それが、女子力のひとつでしょうか。そういう方面ではソヨン、勘が鋭い。
歴史には疎(うと)いけどね。チョンヌンが誰の陵墓かとの質問は、ソウル出身では
ないソヨンにはちょっと難しいかも。それにしても 丁若鏞 チョン・ヤギョン は
的はずれが過ぎました。笑い声が増えています。知っている歴史上の チョン を並べた
だけとしても、臣下に過ぎない者に「陵」はありえませんから。
ケポ(開浦)洞をテポドンと間違えるし。ソウルの地名と北朝鮮のミサイルじゃ
大違いです。社会性の欠如とか、ここは女子力でもどうにもなりません。

ちなみにスンミンが、ヤン・ソヨンを思い出すとき、 音大の と言っていますが
日本でいう大学のことは大学校、学部のことを大学と韓国では言います。だから音楽学部
は音大 ウムデ ですね。ついでに北朝鮮のことを、韓国では北韓(プッカン)と言います。

しかし二人の乗ったバスは、後に医師と結婚したソヨンが住む開浦(ケポ)洞行きです。
二人は知らないまま未来への疑似体験をしているのかな? そこのビル屋上で聴く歌もまた。

指切りまでして約束した初雪が降る日。ソヨンは例の空き家を訪れ、ずっと
スンミンがやってくるのを待っていました。スンミンを信じていたいから。
確かに”이제 그만 꺼져줄래?”「もう ここまで 消えてくれる?」とハッキリ言われ、
CDを返されたけど、屋根に雪が積もるほど、雪が降りやんだ夜空の空気がすっかり
冴えわたってしまうほど待ち続けました。

気のせいか、ソヨンのほおに涙のしずくの跡があるような・・・・。(映像の照明を
わざと暗めにしていて、ここも監督、上手い!)
そしてついにあきらめ、以前、彼に貸し、決定的に別れを告げられた時に返却された
フォークデュオ展覧会(チョンラメ)のCDと、プレーヤーがなくて聴けなかった
と言われたから、わざわざプレーヤーを横に添えます。

立ちあがったソヨンは以前、二人で植えた植木鉢の前にたたずみ、背中を見せます。
一緒に花の苗を植えたのは秋の終わりが近いとはいえ、まだ暖かな日差しの残る秋。
初雪のこの日、花は咲いていません。本当に短い交流だったとわかりますね。
(韓国では欧米と同じように9月が新学期です。留学とか時期を合わせないとネ)
ソヨンの左腕がすっと上がって、すぐに体の横の元の位置に戻ります。
一瞬、ソヨンは涙を拭ったのでしょうか?
泣いたのか泣かなかったのか、わざわざ秘密にする必然性はこのシーンにあるでしょうか?
ありませんよね。だったらわかりやすく、前から、ソヨンが目に指を当ててて拭うシーンを
撮ればいいのに。(と、ギモンがわいたのが二度目にみた時。で、3,4,5回と続けて^^)

35歳という大人になって再会した時、ソヨンは左手中指で二回、涙を拭っています。
左手なんです。今度は前から、観客にもわかりやすく撮っています。ネ、上手いなァ^^。
(ちなみに韓国では数え年で年齢を言うので、普通は1歳引くと日本と同じになります。
2023年6月から世界標準の満年齢に統一。)
このシーンはおそらく、監督からの、この映画はこんな仕掛けがいろいろあったんです、
といった観客へのメッセージというか挑戦状と思いましたね。二度目の時に。
前から撮らず、わざわざ背中を見せるカットの意味に、ちょっと気づいてネといった。
おやっ? って、ちょっと異常センサーを働かせて、もしよくわからないなら、もう一度
最初からみてねネ、実はいろいろ仕掛けていますから・・・ということなのでしょう。
そんな必然性の背中のシーンなんですね。しかもエンディング近くのシーンだから、もう
一度最初からみなおして、ちゃんと理解してくだされば・・・という監督の想いなんでしょう。

さて一方のスンミンはソヨンをあの家に待たせたまま、先輩とソヨンが部屋で何かあった
に違いないと疑心暗鬼で、事実を確かめることもできないまま、すねて、いじけ、意固地
になって自室で横になったまま。でも目は涙でウルウルしてますねぇ。ホント、不器用な
男子です。スンミンには家が貧乏というコンプレックスもあって、それは自信のなさに
つながります。こんなに苦しいのなら、いっそ全部やめ。ソヨンの幸せを願うだけでいい、
とか・・・。一見、論理的かつ利他的なのでヒロイックですが、この辺、いかにも、ある種
の男子のアルアルです。しかしこの不器用ともいえる真面目なところが彼の魅力なわけで。

実は恋愛って肉体を持つがゆえの欲望だけでなく、支配欲も大きいわけ。だから
スンミンとしては自分が獲得できたかなと思った権利を理不尽にも急に奪われた気持ち。
ソヨンはくったくなく「お金持ちと結婚する」と言ったけど、多分、あなたが
お金をたくさん稼いでね、と言うほどの気持ちだったのでしょう。、でも、
スンミンとしては、あの金持ちの先輩が心にひっかかっていますから。
で、あの家へ出かけず、スンミン、ソヨンがくれたラストチャンスを捨てちゃいます。
で、15年後に明らかになる初恋の真実が、なんとも残酷な大どんでん返しとなるのですが。
ったく、ソヨンも、口は災いのもと。

二人が幸せだったのは一学期のちょっとの間だけですね。
あの空き家でソヨンは「わたしたち こうするのはどう。一緒に
レポートをするの。公平でしょ?」
と言ったのに、スンミンは「それが何が公平なのか・・・」と
論理的な結論を口に出しています。
ソヨンのほうは、君がわたしに気があることはわかってる(バスの窓の視線で)、
かわいいわたしとデートできるからうれしいでしょ?
という主観的判断が入っていますよネ。ちゃんと公平どころか、
スンミンには過大すぎるほどの報酬でしょう。もしソヨンが、自慢そうでも、
それを口に出していたら、スンミンは、僕なんかで・・・とか言って、
とまどいながら、ちゃんとつきあい始めることができたのかも。

スンミンが校舎の外で待っていたとき、ソヨンは学内放送で
「花を植えました。ときめきながら春を待つのも悪くないかなと」
などとマイクに向かって話し、最後の曲に二人でイヤフォンを分け合って
聴いた展覧会の「記憶の習作」を紹介します。
スンミンは放送の様子が見たくて、窓の外でピョンピョンと跳んでいます。
「植える」というシーンはエンディング近くでまた出てきます。

放送を終えて出てきたソヨンがちょっと得意げに「放送 聞いた?」と尋ねると、
子犬のように小走りに駆け寄ったスンミンは「オォ 君 声がすごくよかった」
と、無邪気なものです^^。・・・でもすぐ後ろに(アクマのような^^)先輩の姿が。
(エピトーン・プロジェクトの歌の歌詞でも出てきますね。「声がいい」って)
先輩は「おい、お前がなんでここにいるんだ?」と、ソヨンとの関係にギモン?^^
でも幸せなこの会話の後に続く次のシーンは先輩の車の中。狸(たぬき)寝入りをする
スンミンは、無念すぎる言葉の連続に地獄の底へ真っ逆さまといった衝撃を受けるのです。
恋愛って堂々巡りを始めたらムズカシイ。単純で無邪気に時間が過ぎればベストなんですね。
でも、それじゃ映画にはならない。成立させる要素が不足しちゃう。

とはいえ、ソヨンがどんな魔法を使ったのか(なに、ソヨンに頼まれればゴキブリ
みたいにホイホイと^^)、スンミンがソヨンの引っ越しの手伝いをしています。
本棚みたいなラックですが、なぜかこの1点だけ?という引っ越し。
業者に頼んだけど、ソヨン、頼み事の口実にこのラックだけを残していたのかなァ?

スンミン、息遣いも苦し気ですが「重いものを持つのは好きだ」なんて
理屈にあわない返事。
しかし、いいことはするものですね。スンミンのこのフットワークの良さが
15年後、段ボールを片付けようと持ち上げる行為につながります。
そしてソヨンの秘密が目の前に暴露され、二人には奇跡の真実の時間が
訪れれることになります。15年前だったら、こんなラッキー、起きる
わけがない。でも、今回は起きるんですね。偶然なのか、必然なのか^^
だから、やっぱり 縁  なのです。

ラックを運んだスンミンは引っ越し先の半地下の部屋に入ります。
(住む場所が、出会いの場となった大学をはさんで、スンミンとは
反対の方へ行ってしまったソヨン、なにか波乱含み)そして引っ越しアルアルですが、
小さかった頃のソヨンのアルバムを  見る?  と尋ねられるまま一緒に見ます。
これって、女性が、好きな男の子に送る わたしのことをよく知ってね、という
サインじゃない? でもスンミンにそんな高等恋愛術なんかわかんないよォ。

しかし脚本というか演出が巧みです。部屋で実際に何があったのかとか、実際は
涙を拭ったその肝心のシーンをあえて見せないのです。ちなみに、先輩を部屋には
入れたけど、まだ直前キスから逃げるだけの意思を持っていたのだから、ソヨンは
なんとか無事に切り抜けたと信じます。いや、何かあったから言い返せないのかな?
それとも「消えてくれる?」という余りの疑いぶりにあきれて、わけがわからないまま
立ち尽くしてしまっただけなのか?それともソヨン、先輩にキスくらい盗まれたかも。
酔っているせいでの二回目のモレキス?それとも泥酔して外でキスを迫られたところを
みられたかもと思ってるから、強く言い返せなかっただけ?

だから、もしかしてソヨンは、スンミンがどうして連絡してこないのか
その理由がなんとなくわかっていたのかも。ソヨンは、あの模型を見つけたのですから。
それで視線がつい下へ向いてしまう。だけどソヨンは、わたしたち、これから
どうなるの?どうするの?と確かめなくてはと強く感じているから、じゃなけりゃ
諦められないから、スンミンを待ち伏せしたのです。
でもサ、見てる第三者としては、実際は何もなかったと思うんだけど、当事者の
スンミンとしては、そうは(気楽に)思えないわけで^^:

儒教の影響が強い韓国では長く、キスをしたことのある美人と、したことがない
不美人と、どちらと結婚するかという問いに、不美人を選ぶ男性が多い時代が続き
ました。それだけ貞操観念ー-しかし書くだけでも日本じゃ死語だなぁと思うー-
が強く意識され、その傾向は今もまだ若者にも残ってはいます。なに、ラブホ乱立
だし、ネロナムプルなんて言葉も流行語となり、世界にも紹介されちゃったけど。
ネ=「自分」がすればロつまり「ロマンス」で、ナム=「他人」がすればプルつまり「不」倫
という身勝手ダブルスタンダードが横行してはいます。でも初体験はちょっと日本より
遅いという傾向もないではないようです。

ただ、先輩に抱えられて部屋へ一緒に入ったのは、誤解を招いても仕方のない行動だった。
酔わせた女の子をかついでベッドに寝かせれば成功で終わり・・・・などと自慢していた、
しかも部屋にパンストという証拠まであるプレイボーイの先輩が相手ですから。
ソヨンとしたら、そんな先輩だなんて思っていないもの。
スンミンに、部屋に入る初めての人だから光栄に思いなさいと言うほど
部屋に上げることを特別に思っているあのソヨンが・・・。

スンミンは、キスを嫌がって体をよけるソヨンを見たくないながらも見ているのに
キスから逃げ切った最重要の場面は、見ていられなくて壁の角に隠れてしまっちゃった。
ソヨンがちゃんと反対側に顔をそむけて避けていたのを見ていないのです。
それがどんなに大きな亀裂につながっていくのか、その時の二人は全然気がつかない.

メイキング

スンミンは「ナン ノルチョアヘ(ぼくは君を好きだ)」という練習までした告白の
口実として持ってきた模型を置き去りにして帰ってしまいます。
概論の一学期最後の授業なのに出席せず、サプライズにしたいから、ソヨンからの
連絡にもこたえず、スンミンはきっとこの模型づくりに熱中していたのでしょう。
スンミンにとって、そんな小道具を使ってでもソヨンに会って、ちゃんと告白する
ことが授業よりもずっと大切だったのでしょうね。それで打ち上げに参加せず、
ソヨンがお酒に酔って先輩に介抱される痛いシーンになるわけですが。初恋って、
こんな風にちょうどタイミングがずれるんだよねェ。そんな不器用さが愛おしいんだけど。

先輩と部屋に入ったソヨンについて、親友のナプトゥクに胸中を明かします。
涙ながらに彼の腕の中で泣いたのです。それなりにでもナプトゥク(納得)しなくては。
初めて心に刻んだ女子を失ったのですから、胸が張り裂け、次の瞬間、今度は胸が
つぶれるのです。なのにまた張り裂ける。男泣きに泣いちゃっています。
そして、男らしくちゃんと結論を出さなければという気持ちに傾いていきます。
彼、誠実なんだけど女性に慣れていなくて、結論を出す前に確認しなけりゃって思いつかない。

ただそんな不安定な状況から脱出して解消しなければというのは誠意ある男子ならではの
考え方でしょう。フタマタとか浮気が平気な男の子はこうはケッペキに思わない。
先輩を選ぶソヨンにおかしな迷惑をこれ以上、かけられないという理屈。
(ちなみに、中途半端に耐える力というのがリーダーに求められる条件です)

しかしナプトゥク、同年なのに、世慣れして大人になるのが早すぎです。
にしては、いざとなると雪合戦とか雪だるまですから、なんかかわいいけどね。
ただ浪人生なのにハピネスの p が2つか3つかなんて疑問は、ちょっと
大学諦めた方がいいレベル。或いはシナリオの仕掛けとして
2P,or not 2P (シェイクスピアのハムレットの中の有名がセリフ
To be,or not to be を下敷きにしているのかも。生きるべきか死ぬべきか
って意味ですが、もっと、(この世に)在るべきか、在らざるべきか が正確な訳)
ま、大人になったら、それでも普通の韓国人男性の範囲内に収まるでしょう。
スンミンはその辺が不器用。でもだからこそ、ソヨンが信頼して好意を寄せたのです。

スンミンはそのままずっとソヨンと連絡を取らず、わざわざ掲示板の前で待ち伏せてくれたけれど、
ソヨンに「消えてくれる?」と後戻りできない決定打を放ってしまいます。ちゃんと
なにがあったのかを確認せずに。(しかし、できないよなぁ。若いって、そういうこと)
ケッペキにも、会う口実になりかねないCDも手渡しで返します。
無表情というか冷然というか、自分の想いを殺し、自分自身さえ殺して固い表情です。
ネ、変に論理的で、でも結局ドジで身勝手な男子の理路整然というヤツです。
自分を冷酷に押し殺して下した、ソヨンには取り付く島もないと想えたスンミンの
冷めきった態度と直接つながるのが、15年後、花嫁の衣装選びにつきあいながら
真実を知ってボーゼンとしてしまっているスンミンの姿ですから、監督、やるぅ^^

冒頭にかなり強いピー音があります。  展覧会 記憶の習作

映画全体が、 こうなったのには実は、その前に〇〇〇があって  という、
混線しがちな倒叙(とうじょ)法で描かれているから、なんとこの掲示板前
の別れのシーンはほとんどエンディングで出てくるのです!普通なら親友に抱かれて
泣いて、これで、 ぼくの初恋は終わり なのでしょうが。

ソヨンは、ファーストキスの相手はスンミンとわかっていました。
女子から言い出せないけど、そんなことができる隙をわざと見せていたのです。
誕生日なのだから、何か記念になることが起きればいいな、と淡い期待もあったのかも。

線路歩きで遊んだとき、ソヨンの伸ばした右手は、自然に思える感じでスンミンの手に
わざと触れそうになります。自然にふれあえたらいいな、なんて女の子の気持ち。でも
スンミンには女性への肉体的接触はまだ無理。間違っても触れないよう左手にも過剰な
意識を使っているから、遊びはスンミンの負けです。いざとなったら、女子の方が肉体的
なスキンシップに積極的なのよォ^^(で、40代の男性は妻のシャワーがコワい^^
なんてセリフが韓国ドラマの中でありましたが)
男の特性は、何か決めたことをするなら、その結果にこだわること。柴田翔の「されど
われらが日々」でも、男は積木を一生懸命高く積み上げることに熱中してしまう。一方で
女子はただ一緒に積んで、積めたらいいし、途中で壊れて笑っちゃってもいい,。ただ
一緒に遊んで時間を共に過ごすことが一番と思ってる)

大人になってから、スンミンがあの時、キスをしたと知っているとちゃんと告げていますネ。
「그거 내 첫키스였는데. クゴ ネ チョッキス ヨンヌンデ あれ、わたしの初めての
キスだったのに」って。寝たフリでちゃんと意識しているから、そりゃ覚えています。
レポートが口実にもなった遠出のデートで体験した、あの日の、こっそり盗んだ初めての
モレキス(内緒のキス)。エンディングでの重要なソヨンの告白の一部となっています。

しかし女性に慣れないスンミンはモレキスをしたのに(許されたのに)、やっぱり
自信が持てない。ソヨンが寝たフリをしてくれた可能性など思いもよりません。
で、先輩と部屋に入ったソヨンをもう信じられないって・・・。
気持ちはわかるけど、男ってバカですねぇ。舎人もバカな男の1人だけどさ。

스탠딩에그    오래된 노래

ソヨンが住みたい家として紙に書いてデザインし、スンミンは告白の口実として模型に
仕立ててソヨンの下宿へ向かいました。昼間からずっとソヨンの帰宅を待ったあげく、
酔ったソヨンが先輩にキスされそうになり、抱きかかえられるようにして部屋に入るのを
見せられてしまいました。金属のドア越しに物音を聞こうとして何も聞こえないのは
いいことなのか? 悪いことなのか?

ソヨンがあの家でずっと待ち続けたように、スンミンもそうやって向かいの街角で
ずっと実は待ち続けたのです。むしろ最初に待ち続けたのはスンミン。その結果が、
あの空き家で雪が降り積もっていくほどに待つことになったソヨン。
甲斐なく待ち続けるという、初恋に敗れるという受傷はちゃんと二人に平等(公平)で
シナリオのお見事なこと! 青春の傷って、大人になるための通過儀礼なのかなぁ?

しかしもちろん、告白を待っていたソヨンの方が、ずっとずっと
待ち続けていたとは言えます。半分はあきらめながら建築依頼を口実に、
15年後にスンミンの前に現れ、いよいよ最期の夜にスンミンから
「好きだった」と告白されてようやく収まった気持ちがありますから。

だから、気持ちがよみがえったといったものではないんです。小さな灯となっていたけど
ずっと15年前から、二人の胸の奥で大事にしまわれて存在しつづけていたのです.
そういう風に人を想うタイプなのです。二人とも。程度の差はあれ。
もしソヨンが模型を途中で捨てていたら、ソヨンの胸から初恋の灯が消えたということ。
もしスンミンがソヨンの誕生日を忘れ、あのCDをなくしていたら、それはスンミンの初恋の
灯が消えたということ。それなら第二章があっても、一度失われたものが蘇る物語となります。
でも二人の初恋はず~~~っと、窒息せずに、胸の奥にしまわれて続いていたのですから。

スンミンだって当時、告白したら  わたしも好き  とソヨンに言われる日を
気持ちのどこかで、いや全身で望んではいたでしょう。一も二もなく熱烈に。
でも、迷惑はかけられないと、キッパリと想いは断ち切ったのです。あの初雪の夜に。

で15年後、突然、会社に現れたソヨン(ハン・ガイン)に、もちろんソヨンと
わかっているのに、スンミン(オム・テウン)は誰かわからないフリで、ところで
누구… 신지? だれ・・・でいらっしゃるのか? なんてフツーに敬語で対応して
切り抜けようとします。で、ソヨンもタメ口から社会人としての敬語になって
나 몰라? …… 세요? わたしを知らない ・・・・のですか?
옛날에… むかし 대학 1학년때… 大学の1年の時  と説明し、ヤン・ソヨンと
名乗って   チョンヌンで  音大   と言葉を継ぎます。
貞陵 정릉 チョンヌン まで出されたら、旧知の人であることは明白です。

というか ソヨンはスンミンの今の事情を知らないから、思い出してもらおうと
たとえば一緒に空き家を見つけ、花の苗を植えたとか、ケポ洞へ行ったとか、
線路遊びをしたとかいろいろ言い出しかねない。それはマズい。スンミン、 音大
と聞いた途端、方針転換です。「ああ、そうそう 音大 ヤン・ソヨン」って
取ってつけた笑顔で、ソヨンが思い出をたどることをやめさせます。
しかし本当に見知らぬ人と思えるほど誰かわからないなら、
普通ならもう少し抑えた演技でいいはずです。もっと冷たく事務的に。
(タメ口も15年前、ソヨンからでしたね)

オム・テウン、見知らぬフリが、やけにオーバーでマンガチックと言えるほど。
ここ、本当に誰かわからずに忘れてしまっていたらストーリーの前提が崩れてしまいます。
ああ、そうか、わからないフリをしているんだなと、ちゃんと観客に伝わらないといけない
シーンなのです。その辺のギリギリを監督や役者らが探った結果の若干オーバーな演技。

シーンはちょっとオーバーに過ぎますが、知らない人のフリというか
35歳のスンミンが演技をしなければいけないのは、それなりに理屈が通った男性の
判断です。でも右横に座ったソヨンの様子をチラッとうかがうスンミン、居心地悪そう
で、すでに挙動不審でしょ?^^ フィアンセがその顔を見たらアヤシいってバレちゃう^^

なぜ演技しなけりゃいけないかって、まず15年前の別れの決意までがつらすぎた。
その想いにまた向き合うのはたまらないという避けたい気持ち。さらに取り次いだ
女子社員は秘密のフィアンセで、これまで彼女から初恋の様子を訊(き)かれても、
多くを語ろうとせず、その初恋の女性の悪口を言って話を打ち切ってきた事情が
あったから。おそらくもっと大切なことは、あの初恋はピュアなまま心の奥にしまって
だれにも(特にフィアンセには)絶対に触れさせたくない気持ち。

具体的には、甘くもつらすぎる過去。今さら傷口から大量の出血などごめんです。
結婚を決めている。会ってもなんにもならない。それどころかむしろ話がフクザツ
になるだけ。もう縁はないと決めた女性のことでトラブルになるのはイヤでしょ?
でもあまりに白を切っても、かえってフィアンセにアヤシまれるから、やっと思い
出したフリ。フィアンセの手前、あんな風に知らないフリでとぼけて
女性としての勘が鋭いフィアンセをごまかす必要があったからなのです。なおかつ
観客には、知らない人のフリという演技をしている、とわからせるためのダブル演技。

もっとも1年生の時とまではフィアンセに教えました。もうソヨンとは会うことはないと
思っていたのですから。あまり言わないのも、今でも想ってるから?って疑われそうだし。

ちなみにネットにはイ・ヨンジュ監督のインタビュー記事があり、次のように語っています。
私は気付いていたけど知らない振りをしていたという認識で、俳優にもそのような演技を
要求しました。ただ、あまりにも露骨にはしないでくれと言いました。私はスンミンの過去の
場面は失敗した初恋の話で、卑怯な男の反省文だと思っています。彼はその後、成長する過程
でソヨンに向かって「目の前から消えてくれ」と言ったことをどれほど後悔したでしょう。
何であんなことを言ってしまったのだろうと後悔しながら30代になり、もうそんな真似はしない
と自分でも信じていたところに突然ソヨンが現れて、無意識に彼女の昔の姿が思い浮かんだ
のではないでしょうか。そしてあまりにも動揺して、知らない振りをしてしまった。
結局は卑怯な男のままだったということです。

監督はスンミンのことにしか触れていません。ソヨンのことは、酔ってチクショーって
言いながらスンミンをたたくといったシーンが、ソヨンが、スンミンとのことで生涯の
悔いとなる想いを持っていることを端的に示しているのかな。それとかあの告白での涙とか。
スンミンを思い始めたシーンはわざと描かれなかったけれど。

記憶の習作    展覧会(冒頭でかなり強いピー音が入っています)

フィアンセを入れて三人で喫茶店に行き、フィアンセは、スンミンが1年の
時にモテたのかとか様子を訊きたがります。スンミンはそんな話を止めたくて
「つきあってるのか?コンビか?」と茶々を入れますが、フィアンセはまっすぐ核心を突きます。
学部も違うのに、どうやって知りあったのですか?合コン? と水を向けると、二人の関係を
知らないソヨン、勝ち誇ったかのように満面の笑顔で「ああ、その話、まだしてないのね。彼が
わたしを追いかけ回したのよ」。スンミンはフィアンセの手前、「また、これ、作り話」と軽く
抗議するように否定しています^^ スンミン、崖っぷち。
(追いかけ回した というセリフに続くシーンは、ソヨンが概論の授業に遅れて走っている
シーンです。うまいですねぇ、上手につなげるもんです。あと1回、そんなシーンがありますが)

設計がようやく終わってスンミンとソヨンは食事を一緒にすることになります。
ソヨンはスンミンのためにイマイチと批評したネクタイを買い、当日、化粧に集中
したせいか、ついネクタイを忘れかけます。(観客にネクタイを印象付けている演出。
なぜネクタイを買ったのでしょう?それを今贈る意味は?って観客に問題を出しています)
ソヨンは買った店の紙バッグにネクタイを入れて、ワインが美味しいと知るお店へ向かい
先に着いたので、ネクタイをテーブルの上に置いて待ちます。

ところがスンミン、フィアンセと一緒に現れます。おそらく、ソヨンをなんとなく気にして
要監視対象とみるフィアンセが一緒に行くと言い張ったのでしょう。断ったら疑われますねぇ。
というわけで、ソヨンはさりげなく、でも急いでネクタイをテーブルの上から片付けます。
工期が設計を変更しなければ2か月と聞いた後、ソヨンはおずおずというか、おもむろに
訊(き)きたかったことを口にします。「君、恋愛しないの?」。スンミンはワインを飲んで
イエス・ノーを答えません。(今度はスンミンがイエス・ノーを答えません。一方のソヨンは
一緒にレポートをするのはどう?と提案したときほどの自信はありません。だから、
おずおずと、になってしまいます)

所長から電話がかかってきてスンミンは「図面は渡しましたが」と言いながら席を離れます。
ソヨンはついてきた彼女とスンミンの関係が気になっていますから「恋人はいないの?」と
探ると、早ければ年末に結婚すると笑顔。ソヨン、排除できた、と思ってまずはひと安心ですが。
帰ってきたスンミンが「何がそんなに楽しいんだ?」と割って入ると、フィアンセは
「あなたの話」とぶちまけます。ソヨンは「オオッ何よ。そんな仲だったの。知らなかった。
隠すなんて陰険ね」。フィアンセは、会社のだれにも内緒なんです。オンニ(お姉さん。親しい
女性に対する呼び方)は知っていらっしゃるべきだと思って、と公開した理由を明かします。
(もう、あなたの居場所はないと宣告しているようなもの)
今は明らかな存在となったフィアンセはどんどん質問攻めです。
スンミンの初恋について知ることができるかもしれないし、ソヨンに対しての牽制(けんせい)
になるかもしれない。どちらにせよ、どんどん突っ込んで、彼女に損はない。

スンミンは大学の時が初恋で、1年の時だったと言うけど、くわしくは教えてくれない。
「誰かご存じですか?」とフィアンセ。ソヨンは「わたしの知ってる人?気になる。言ってみて」
と迫ります。フィアンセも「言ってよ」と援護射撃しながら、スンミンが言い逃れに使っていた
욕(辱)ヨク  とされる罵(ののし)り言葉をソヨンに撃ち込みます。
「쌍년이었다며?  シャンニョン(あばずれ、クソ女)だったって?」。
(韓国社会は日本より道徳的性向が強烈です) フィアンセ、わたしったら、スンミンの言葉どおり
こんな言葉、言っちゃったといったムジャキ風な表情。

スンミン、目が点になって顔の表情が固まっちゃった。
オム・テウン、最初の どなたか様なのか 同様、ここも見せます(拍手^^)
いつまでもお姉ちゃん(オム・ジョンファ)の威光で役者やってんじゃないよね^^
しかし韓国語って日本語と比べ物にならないくらい ヨク が多いそうです。
罵詈雑言、もう言いたい放題なのかな? 80年代だったかな、米軍相手の娼婦に、すれ違い
ざまに「ヤンガルボ(洋さそり)」と一突きって、呉善花 オ・ソンファ氏が書いてました。
(でも何も売るものがない韓国では、まず女性たちが国家経済を支えたとの研究があります)

ソヨンはフィアンセの存在を知って結局、買ったネクタイをスンミンに渡せず、
父親用にしてしまいます。親ってのはソンな役回りですよねェ^^:
でも、初恋の相手が自分だったのでは?と思うのは無理もない話です。
そんなにすぐ新しい彼女を見つける器用な男の子だったら、ソヨン、好きに
なっていなかったでしょう。先輩でなくスンミンを選んだソヨン、偉いっ!

しかしスンミンの知らない素振りは若いときから35歳まで、たびたびです。
15年後、初雪の日を言い出したことをしらばくれたのはともかく。
ソヨンが 너 첫사랑. 그 썅년이 나냐고? 「君の初恋。あのあばずれ(クソ女)」
わたしじゃない?、そんな気がするんだけど  と水を向けても、
너 아니야. 너랑 나랑 뭐가 있었다구? 君じゃない。君とぼくと何があったって?
で、結局、ユーモアのセンスがおかしいといって全否定するし。

でも、フィアンセにはそんな言葉で話を打ち切っていたけれど、スンミンには
ソヨンは大切な大切な初恋の女性なのです。一途に真心を捧げた女性なのですから
ここで  「あばずれ」=ソヨン  とするわけにはいかないんです。
気持ちとして、とてもじゃないけど  あばずれ  などとは無理。
いまだにピュアな想いの対象なのです。
ただ、そうなんだけど、ソヨンとしては「あばずれ」呼ばわりでもいいから、
スンミン自身の口から  君が初恋だった  と言ってほしかったんだろうなァ、
うん、どうしても聞きたかったんだろうなァ^: 単なる不完全燃焼じゃ終わりたくないもの。

ソヨンもいつも知らないフリ。ファーストキスを盗まれたのに、その時も
なんにも言わない。モレキスが終わって続きはないと思って、タイミングよく
ぼんやりとしながら目を開くエンギ。「好き」とちゃんとスンミンに言ってほしい
・・・が、女子のフツーの乙女心だもの、そりゃそうなるんだろうけど。

こんな風に、明確に言語化して事実を白日の下に明らかにするという作業は、女性の
気持ちを描くのに向かないから、ソヨンのスンミンへの想い始めが描かれないのでしょう。
大人の女性ならともかく、若い女性の場合は特に。
恋愛で世界一理屈っぽいと言われるフランスの女性だったら、しっかりと言語化して説明
してと、男性に明晰(めいせき)さを要求しちゃうのかも。でも案外、自分の気持ちは
わたしはいいの とか言って男性からの意見とか質問なんか却下しちゃうのかな?^^

そしてスンミンとチェジュ島の港で一緒に飲んだとき、慰謝料について話したあと
ソヨンは「わたし、ズルいよね」「本当、あばずれよね」と自省の言葉を漏らします。
酔った勢いで「チクショー」なんて何度も叫んで、スンミンをたたき、胸に
飛び込んだりします。スンミン、なんでたたかれるのかわかんないけど、ソヨンの
右肩下のあたりをポンポンと、あやすようになだめていますが。

ソヨンとしては、いつも大事なことは相手に言わせる。こちらは、それを受け入れる
側だから、こちらが優位になれる。そんな計算がいつも・・・だから、ズルいという
反省なのかな? 慰謝料を吊り上げられる離婚調停の件だけじゃない。
スンミンとも、こちらからちゃんと発信していたら、今ひとりきりという、こんな
惨めなことにはならなかったのに、という後悔があるのでしょうか?

(その前に空港で、ひとりと指摘されて、プライドが高いソヨン、激オコでしたね。
80年代後半、韓国リピーターの日本人男性が、韓国の珍しい光景として撮った写真が
男性が1人で食事をする風景。日本じゃ普通だけど、韓国では、一緒に食事をする
友だちとか相手もいないのか?って、ダメなヤツみたいな感覚を持たれていました。
2020年㈹となると、さすがに個食も見られるようになりました。ペクス(無食)の3食
というドラマでは最終回、インターン仲間の主人公のアイデアを盗んで「ぼくは最善を
つくしただけ」と謝ろうともしない男性が、競争に勝って正社員になったけど、ラストで
ひとりで食べているというシーンがありました。孤食という事実に意味があって、仲間外れ
になっても仕方がないヤツという描写です)

https://youtu.be/kJ13gYhD_S4?si=dFkGeHycaCX8N-Bf

実際、スンミンをたたいたけど、その7割ほどは自分自身をたたいていたのでしょう。
そして3割ほどは、どうして強引にわたしをさらっていってくれなかったの?
というスンミンへの非難・・・というか、もどかしさ、じれったさ。多分ね。
(でも、そんなことできるスンミンじゃないって、ソヨンにはよくわかっているけど)
そして次のシーンは、線路遊びのシーンです。負けたスンミンを、ソヨンは笑顔で
軽やかに何度もたたいています。これ、じゃれてスキンシップを深めたい過程でしょう。
二人の関係を一気に深めるチャンスとなってもよかったエピソードでした。
深まっていたら、二人は一緒に暮らしていて、酒に酔ってスンミンをたたくこともなかったかも。

しかし、チェジュでたたいて、過去の線路でもたたいてと、「走る」と同じように
映画づくりの文法どおりに見事に「たたく」でシーンをつなげて、ホント、観客は
この辺も評価してあげてほしいなぁ。この辺のウェルメイドな感覚は、日本で
リメイクしたら失われてしまうでしょうねぇ。

反省といえば、ソヨンが酔ってしまう前のシーン。
メウンタン 辛い湯(スープ) が運ばれたとき、ソヨンは、自分の人生みたいだ
と感慨を洩らします。中身がなんでも、とにかく、ただ 辛いスープ。カッコよく
アナウンサーを目指し、ダメなら、好きになってくれたのが医師だから他人に自慢でき
そう。誰に聞かれてもカッコいいから、この辺で結婚して・・・といった上っ面、
表面だけ、人の目を気にしてばかりいた生き方を振り返っての想いなのでしょう。
もっと自分自身が自分の世界を持とうとしていたら・・・・。

済州島(チェジュド)に建てるソヨンの家のことで、ソヨンはいろいろと
意見がまとまらず、スンミンとの時間を故意に増やしたいようでもあります。
そして大幅に施した改築工事が完成した夜、ソヨンはため息をつき、
「これで終わったわ。全部終わった」と感慨を漏らし、そんなソヨンに、
スンミンは「家を建てた感想は?」と尋ねます。

ソヨンは「よかった。うん、よかった」と答えますが、父親を引き取る家のことが
半分、しかしそれ以上にスンミンの今の様子を知ることができたことが
「よかった」のでしょう。これでソヨンも、スンミンのことをキッパリと諦め、
再出発できるのですから。(ソヨンはワカメスープを食べた時、故郷の
チェジュ島で再出発するつもり。カッコよく、なんて言っていました)

「あなたは?」と逆に尋ねますが、スンミンは言葉を濁してハッキリしません。
ソヨンは「嬉しくないの?」「家を建てるって約束したじゃない、忘れた?
キオク アンナ?(記憶が出ない? = 忘れた?)と、ちょっと不満げ。
相変わらずハッキリしないんだから、なんて思ってるのかな?^^

ソヨンに家を建ててくれと言われていたことは、もちろん、覚えています。
スンミンがどれほどの想いでこの家の建築に向き合ったか、一言では語り尽くせない
のです。それを語れないことが、かつての誠実なスンミンが今も残っていることの証です。
そして多分、ソヨンは、スンミンが現場に泊まり込んで工事に懸命となったことを知らない。
(早く来たのね、なんて能天気?なことをその朝、ソヨンは尋ねていましたね)

ソヨンは最後の機会だ、この夜、もうこの時しかないと思って肝心な話に踏み込みます。
「말해 봐. 너 그때 왜. 나한테 잘 해줬어? マレバァ。ノ クデ ウェ ナハンテ
チャルヘジョッソ? 言ってよ。あの時、どうしてわたしによくしてくれたの?」
スンミンの方も、明日はない、15年前の自分の真情、ソヨンとこの家の新築のためにかけた
情熱を少しでも打ち明けたい。これだけは言っておこうと素直に「널 좋아했으니까.
ノル チョアヘッスニッカ 君を好きだったから」(以前練習した告白が、過去形になっただけ)。

ソヨンは聞きたかった言葉が今、あまりに簡単に聞けてしまって、ちょっと拍子抜けです。
で、素直に “고백이야? 오래도 걸렸네. コベギヤ? オレド コルリョンネ 告白なの?
長くかかったわ(やっと聞けた)と感慨を伝えます。そこで感情を爆発させても無理ない
のだけど、ソヨンも大人になっていて、結婚が決まっているスンミンに配慮できるのです。
それどころかソヨンは、スンミンの告白を受けても、自分の想いを告白することすらできません。
そのスンミンが、結婚が決まっていて、今さら動かしようもない決定的事実ですから。
ソヨンは、スンミンにとってある意味、なんの資格もない第三者にすぎません。もしスンミンが
フリーだったら、それならきっとソヨンは、実は、わたしね・・・って告白したでしょうに。

「長くかかったわ」とサラっと言っているようでいて切ないですね。
本当に長かった。15年前のあの時に聞けていたら・・・。
あいまいさが残る態度なんかじゃなくて、はっきりと言葉で。
女の子はちゃんと求められてつきあいたいのです。バカじゃないから、好きなんだろうな
とはわかるけど、ちょっと残る不安をすっぱり吹き払うような、はっきりとした言葉で言って!!!

そしたら狸寝入りをしていた先輩のあの車の中で、「いいえ、話にならない」
なんて、スンミンを激しく全面的に否定しなかっただろうに・・・。
あの打ち上げさえなかったら、スンミンは多分、告白できていただろうに・・・。
(「長くかかったわ」とすぐに反応できるのは、ソヨンがあの初恋のころの不器用な
ソヨンではもうないということです。それなりに世慣れて、大人になった証です。)

As one   원하고 원망하죠  願って恨みます

自分が胸に抱いてきた告白はできない現状だけど、せめてあの当時をハッキリさせたいソヨン。
「眠っているときにキスをしたことを知ってるわ。あれがわたしの初めてのキスだったのに」
とモレキスに話を進めます。スンミンは、ああ、やっぱり知られていたのかと思う一方で、
モレキスの気持ちを説明しなければと思いつつ、どうしようかちょっと考えた結果として
やっぱり自分の現在は決定的だ、15年前には戻れない、今さら変な方向に話が行かないよう
「すごく遅くなった。やめよう。帰らなきゃ」と話を打ち切ります。外はもう暗いのです。
結婚が決まっていて今さらどうにもならない(多分、もうそういう関係だから、婚約不履行
などできない)。フィアンセに妙に疑われるのはイヤだし。

ソヨンに引き止める手立てはありません。気持ち的には、もう少し一緒にいたい、
のでしょう。できれば明日も、明後日も。

ところが玄関へ向かった途中で、あの朝、ソヨンらが持ち込んだ段ボール箱が積まれて
いるのをスンミンは片付けようとします。ソヨンが自分ですると言って止めたのに。
スンミンが上の段ボールを持ち上げたせいで、下の段ボール箱が見えてしまいます。
隠すために下にしたのに。
上部の一部が折られているのは、ソヨンがたびたび、わずかでも見たかったからでしょう。
あの当時のピュアだった自分とスンミンの姿を。
段ボール箱はかなりボロボロで、ソヨンは15年の間にかなり頻繁に模型を見ていたようです。

でも大切にしていたから、黄ばんだだけで模型に傷はついていません。
ソヨンの心に残る想いがどれ程か、なんとなく垣間見えますね。
箱の一部が折られているから、スンミンには中が見えてしまいます。それがあの模型。
彼が街角に置き捨てにした模型。当然、この世からなくなったと思っていた模型なのに
ソヨンが大事に保管していたのは・・・意外どころか、スンミンには衝撃です。

それは、ソヨンがゴミとして模型が捨てられているのを見つけた、つまりスンミンが昨夜、
ここでずっと待っていたという証拠の品。彼が待っていたことをソヨンがちゃんと
知ったという証拠なのです。さらに、迫られている様子を見られたかもしれないと、ソヨン
が不安を抱き、だからスンミンに強く出られなかったかもしれないことをも物語る証拠の品です。
もっと大事なことは、今もソヨンが、スンミンに特別な想いを持ち続けている証拠・・・。
さまざまなことを物語る、模型を発見したときのソヨンの表情は固まってしまい、厳しいこと!

あの模型は捨てられなかった。医師と結婚した後でさえも。ソヨンの想いは
ほんの細い糸ですが、初恋の灯はずーっとつながっていたのです。15年の間ずっと。
模型でソヨンの気持ちを垣間見たスンミン。
あの時、あいまいな関係で揺れて崩れ落ちそうな自分自身を断ち切り、必死に想いを
捨てたのに・・・。それどころかソヨンは、そんな風に大事に想ってくれていたのか?
断ち切る必要はなかったのか? ではなぜ、自分に建築を依頼しに来たのか? どうして。
俺をさがしたんだ? 頼む建築家がいなかったのか?と、ソヨンに詰め寄ります。

ソヨンは言葉につまり、「なんとなく」と答えますが、なんとなくで15年も
この模型を大切に持っているはずがありません。「それが理由か?ただなんとなく。
それで全部か? それでどうして持っているんだ」と箱をけってさらに気持ちがたかぶる
スンミン。(論理としても、感情としても当然すぎるほど当然な反応でしょ?)

ソヨンは「気になったから」と力なく答えます。
「あなたがどう暮らしているか。今、どうしているか」。
そして涙まじりにとうとう告白したのです。
「나는 니가  니가 내 첫사랑이니까 ナヌン ニガ ニガ ネ チョッサランイニッカ
わたしは あなたが  あなたがわたしの初恋だから」と。(現在形ですねぇ)

こんな風に、互いに素直に「好き」と口に出せていたら、そんな別れというか
すれ違いなんかなかったはずなのに。スンミンの家の緑の扉がもう今は
ちゃんとしまらないように、もう15年の歳月が過ぎて、二人の仲は戻せません。

エンディングの二人の告白で、それまでの映画の描写は、酒に酔った勢いでソヨンが
スンミンをたたいたシーン、さかのぼって15年前の先輩の車の中でのことなど、
すべてハッキリと、新鮮な意味を持って再解釈することが可能となります。
(特にスンミンは、チェジュから帰ってきてから、いろいろ振り返って考えこんで
いるようです。あの時、もっと違った風に対応していたら・・・とか後悔と反省文がいっぱい?)

二人が告白しあった後のシーン。
スンミンが一歩、スンミンを正面から見返すことができないまま
横顔を見せて涙を流すソヨンの前へと近づきます。

実はそのシーンの少し前、リフォームが終わって夜の帳(とばり)が下りたころ。
スンミンとソヨンは一緒になにかの植物を二人で植えています。
15年前、夢と希望を託して花の苗を植えた時と同じようです。15年前はなんの
花も実りもなかったけれど、今度は何か過去とは異なるいいことが起きそうな予兆
としてのシーンでしょうか?思えば、この家のリフォームとは二人の関係の新たな
リフォームだったということになるのでしょう。その意味でも、この映画の主題歌が
「記憶の習作」に落ち着いたことは奇跡のような正解でした。

スンミンも二人の過去を大事にしたいとは思っているのです。
幼いソヨンが固まっていないコンクリに足跡を残して大泣きした、その水槽を、
そのまま新しい家に生かしているのです。幼かったソヨンが背をはかった、その
傷跡が残るレンガも、「親しみが持てるように」と、新築の家に残して、約束した
ソヨンに対して(正確には大学1年で好きになったソヨンに)真心の限りを尽くします。
と同時に、自分自身への誠実さのために。大切な自己表現となる建築なのです。
(始めは、張り切って最新のコンセプトでと英語がやたら混じり、方向性を間違えましたが)

誕生日だって、15年後、覚えているかな?と信じたいような、でも期待はできない
と黙っているソヨンに反して、スンミンは昼食に誘い、「ワカメスープにしてやろうか?」
と尋ねます。ソヨンが「どうしワカメ?」としらばくれると、スンミンは「君、今日が
誕生日じゃない?11月11日。1111」と、あの遠出してモレキスをした日、ソヨン
が「忘れないで」と言った言葉そのままの表現で繰り返します。
(ネ、ちゃんと覚えてるでしょ?^^)
「誕生日を変えたか?」なんて、スンミン、話が重くならないよう冗談ごとのようにして。
(まだどちらも告白していない段階。他人の範囲から超えないよう冗談めかすしかありません)

오직 너만을 생각한 밤이 있었어    박기영 시작

ソヨンは あれ? と疑問程度に気持ちを抑えています。15年も前のほんの短い期間での
出来事など、うまくいかなかった女の子の誕生日など、フツーなら覚えていられないのに。
ソヨンは嬉しくなって、ほころびそうになる表情を見られないように先に歩き出します。
そして「なんか、かわいくて。ありがたくて」と温かい気持ちになったことを伝えます。
どちらも告白しないままだから、誕生日を覚えているとわかったけど、ありがたくて、
までで、結婚が決まっているスンミンのことを考えるのは、そこまでで終わり。

というわけでスンミンは、誕生日にはジョーシキのワカメスープをおごります。そして
スープだけじゃなくてプレゼントをとソヨンが言いだしたのが、ピアノを置く部屋が欲しい
という設計変更。来週の完工というのに、この期(ご)に及んでですから大問題です。
来月が挙式のフィアンセは、そりゃ怒りますよネ。最低でも1か月は余分にかかるのですから。
上司が、自分がやるからお前は結婚準備を と言うのに、スンミンは、怖い顔のフィアンセに
向かって決然と「やらせてくれ」とセンコクしてしまいます。
惚れたとは女のやぶれかぶれなり なんて江戸川柳がありますが、これ
スンミンの、一途に想った初恋へのやぶれかぶれみたいな真情の爆発です。
ソヨンに真心を込めて向き合いたいのです。ソヨンとの初恋に。

もう初恋の相手がソヨンとわかったって構わない。
スンミンは現場に泊まり込んで完成へと熱意を注ぎます。
工事が終わったときは、写真を撮りながら、感慨深げに家を眺めて回っていますね。
建てて「よかった」どころではないのです。

スンミンにとっては、自己表現という以上に、自己実現なのです。
胸が張り裂けて男泣きに泣いた若かった自分の気持ちを、ソヨンとの約束の家に
思いっきり注ぎこんだのです。封印されていた初恋の灯は、間もなく結婚という
制限付きながら、最後にスンミンの胸の中から、ソヨンにもフィアンセにも見て取る
ことができる外の世界へと、つまりソヨンの新しい家の大リノベーションという行為
の中に満ち溢れ、光り輝いてしまうのです。

ソヨンが自分のことをどう思っているかは関係ない(まだソヨンから告白されていない)。
自分だけの初恋だけど、もう解き放って、あの時の自分とあの時のソヨンへの想いを
精いっぱい、この家に込めたのです。(結果的には、ソヨンの初恋も加わりますね)
二人の初恋が、この家の大リノベーションという形で、ひとつの形あるものとして実現
するのです。初恋への思いの丈(たけ)をこんな形でも実現したから、とにかく、もう満足。

展覧会   記憶の習作

スンミンの初恋は、ソヨンとは関係なく(まだ告白されていないから)いまや満たされて
ようやく旅立つ準備ができたのです。スンミンが、初恋を手放す時を迎えたのです。
だから、「あなたは嬉しくなかった?」とソヨンに尋ねられても、言葉で表すのは
難しい。「建ててよかった」なんて一言では語りつくせない想いが凝縮しているのです。
(そうした男の誠実さが女性にはよくわからない。言葉でハッキリ言ってよ、になっちゃう)

スンミンの肩に頭を乗せて眠るふりをしていたソヨン。スンミンがなにか
決定的なことをするのでは?といった期待もあったのでしょう。
でも15年後の今は、新婚の妻が飛行機の中でスンミンの肩にもたれかかって眠ろうとします。
やっぱりうまいでしょ?同じ行動なのに、別の意味になってるって対比させているんです。
だから向きは右左が反対です。ソヨンの時は、スンミンの右肩。
だけどスンミンの表情を見てください。結婚したばかり、嬉しさいっぱいの男性・・・
なんて表情には見えないでしょ?どこか魂が抜けたような。物思いに沈んで、黙り込んで。

そもそも、ソヨンの涙の告白を聞いた後、チェジュ島から帰ってきたスンミンは普通じゃない。
ウェディングドレスを決める時も、呆然というか、黙り込み、考え込んで、顔と身体はちゃんと
フィアンセの方を向いているのに、心がフィアンセに向き合っていません。視線は少し前の下。
ウェディングドレスを着替えて現れたフィアンセに気づきさえしません。新婦に失礼なことに!
「どう?」と声をかけられて、初めて一拍遅れで「うん?」なんて生返事。全然すぐに対応
できていません。新婦のことは上の空状態。「こっちの方がいい」なんて意見を言いはするけど、
すぐ右横を向いてしまって、スンミン、本当は結婚を避けたいの?
涙の告白でソヨンの意外すぎるほどありがたい気持ちを知ったから、あの秋の出来事は自分にとって
何だったんだろう? あの初雪の夜、なんて決断をしてしまったんだろう? って疑問と反省で
いっぱいになっているんです。もう頭の中も心の中も、自問自答と反省文だらけ^^:

このウェディングドレス選びの直前のシーンが、あのキャンパスの掲示板の前でしたね。
「もう連絡しないで」「もう、ちょっと消えて」と別れを告げてしまったシーンです。
監督はスンミンの「反省」を指摘していましたが、15年の時空を越えて、原因(別れの告知)
と結果(自問自答と反省の現在)が直結しています。これまた映画の文法を踏まえて監督の
お手柄です。映画全体は15年前と現在とが行ったり来たりする構成ですが、ここはダイレクトに
つながるのが大正解。見過ごしかねないけど、意味のある、必然的なシーンのつながり方です。

フィアンセは、新郎となるスンミンにちょっと意見を聞くだけ。心ここにあらずのスンミンなんか
あきらめて、すぐに、セクシーすぎない?と店員への相談に切り替えちゃいます。
せっかくの新婚旅行を兼ねるフライトでも、妻は敏感にも(ウーム、手ごわい^^)、夫が
心ここにあらず となっていることに不機嫌で、飛行機の左側の窓へ顔を向けてムカついています。
でも賢明にも太陽路線を選択し、逆に「眠るわ」とスンミンの左肩に頭を乗せて甘えてみせます。
なかなか、女性としてはしたたか。彼女、やりますねぇ。
リフォームされた家の屋根で眠るスンミンの横で目をとじたソヨンとの、この対比は!

今、横にいるのはソヨンだったかもしれない。いるべきはソヨンだったのに。スンミンは
最期の日の夜にソヨンの告白を聞いてから、そんな疑問、納得しかねる気持ちが離れません。
15年前のあの時、ちゃんと確認していたら・・・なんて思い始めちゃった。
それなりに自己実現できて手放していいはずだったソヨンへの初恋は、どうやらモヤモヤ感を残して
まだ続いてしまいそうな・・・。これあるんです、ある種の誠意を生来持っている男はね^^:
で、今つきあってる女性から、なによ男のくせにイジイジと、グズグズと・・・て言われちゃう。
(それ、セクハラも入ってない?)

展覧会 記憶の習作

しかし狸寝入りも結構、物語を進める重要要素です。ソヨンの初キスもそうですが、
ソヨンと先輩の車に乗ったとき、後部座席でスンミンは狸寝入りをします。
で、つきあったら?という先輩に、 お話にならない などと激しく否定するソヨンの
気持ち(建前なんだけど)を知ってしまいます。初雪の日にあの家で会うと約束
したのに。でも、それってソヨンの照れ隠しというか、自分が求められる立場にちゃんと
いたいという女の子としての気持ちが大きいんだろうなぁ。モレキスの日とかに
スンミンがちゃんと告白していたら、違った反応になったでしょう、多分。
「もうつきあってるんですw」とかサ。そしたら先輩も、それ以上手を出さないだろうし。

1996年当時、韓国ではモータゼリーションが進んで富裕層の子弟が自動車を乗り回す
ようになり、ヤッター族(ヤー は、おい。ター は、乗れ)と言われました。・
先輩もそんな一部のお金持ちのお坊ちゃんの先駆けで、車がモテる要素のひとつだったの
でしょう。(日本だって、そんな時代がありました)
そんな先輩の車なんか、スンミン、本当は乗りたくないよね。

でもスンミンにその課題は重すぎます。女子の気持ちにはまったく不案内です。
必死に二人の会話に割って入って、先輩をけん制し、ソヨンから遠ざけようと努力して
いたら・・・。そもそも狸寝入りなんかしなかったら、そんな展開にはならなかったのに。

さらに Tシャツの guess が geuss になっていて、偽物だって先輩にバカに
されたことにも傷つきます。大体 guess だなんて、訳したら 当ててみな
ってなことになりますから、当てるまでもないほどヒサンで~す^^:
(それなりの大学に合格したのだから、この単語、知っていない方がムリがあります)
映画が公開された2012年には、ドラマ「応答せよ1997」が放送されていて
こちらは  guess とスペルは正しかったけど、その下が本物は ? なのに偽もの
だから、 ! になっていました。映画の方が少し先だから、パクったのじゃなくて
たまたまの偶然、それだけ当時流行のデザインだったわけですね。

一張羅と思って、母親に急に洗濯してもらい、ソヨンとケポ洞へと向かった時の
Tシャツです。なのに・・・ハズカシくて、そりゃ車から飛び出したくなるよ^^;
(奇しくも後にソヨンが結婚して住むことになる江南の高級住宅地ケポ洞。そこのビルの
屋上でイヤホンをひとつずつ耳にして「記憶の習作」を聴きました。ケポ洞がソヨンの未来
と考えると、1年生だった二人の行く末が歌のような習作で終わるのを暗示するような・・・)

母子家庭で貧乏ということがうらめしかったことでしょう。
(ちなみに舎人も、中学生の時、母が買ってきたTシャツに 黄色く大きな文字で
SAMMER と書いてあるのにはひっくり返りましたネ。まぁ母に悪いから、
普段着では着ていましたけど^^)
おまけに、先輩がソヨンを自分の部屋へ誘って、ソヨンも承知してしまいます。
とにかく気に入らないし、もどかしくて、どうしたって聞いていられない。
センパイに気をつけろ、なんてこと、狸寝入りだから言えないし。
そりゃ途中で降りちゃいますよねぇ。

眠っていたはずのバックシートのスンミンが急にここで降りるっていうから、ソヨン
は驚き、表情が曇ってしまいます。バックミラーに映る遠ざかって行くスンミンが気
がかりです。だって、ひどいこと言っちゃったもの。もしスンミンが狸寝入りしただけで、
実は聞いていたとしたら・・・。自分の言葉は誤解だと簡単には言い逃れなんかできない。
誤解と言い訳するら、自分がスンミンが好きと告白するしかない。
でも、やっぱり、それはできないし・・・。

ほぼ完成した新築の家の屋上で疲れて眠ってしまったスンミンの横に
ソヨンは自分も身を横たえ。初めてのキスをしてくれたスンミンの唇に
つい触れてしまいます。
こんな何げない愛情表現って、女性はやりがちですね(それで社内不倫がバレます^^).
そしてもし二人が結婚していたら、こんな風にあたりまえにスンミンの横で眠る日常が
あったはずだったのにと、目を閉じます。この、ソヨンの切なさったら。
(その気持ち、たまらないよぉ)

しかしソヨンが捨てられなかった模型。ちょっと黄ばんでいるけど
ソヨンの変わらない、今も残されている想いが伝わります。
遅れすぎてしまったけれど、「好きだったから」「初恋だから」と互いに告白した
のを受けて、一歩近づいたスンミンと涙まじりのソヨン。顔をそむけたり、下にしたり
スンミンを真正面から見ることができません。

でも、一歩前へ近づいてきたスンミンの想いの意思の力強さを感じてか、意を決して
ソヨンが見返します。その瞳は切ないと同時に、なにか inviting な感じ。
スンミンに何か伝えています。「来て、わたしも行く」。気持ちが通じ合ったのでしょう。
そうやって今度は、ちゃんとお互いの意思を持ち寄ってキスをしたのです。
ソヨンの涙、しょっぱいキスですが。(ハン・ガインの表情演技に拍手、拍手!)

でも・・・互いに求め合って初めてしたキスです。その後の夜の時間で何が
あったかは例によって描かれません。実は、このキスシーンはフェードアウト
していって直後は真っ暗な画面になります。暗転してから次のシーンとなるのは
この部分だけです。監督が意図的に隠したことがわかりますね。

「彼が追いかけまわしたのよ」と言った後はすぐダイレクトにソヨンが走ってるシーン。
「もう消えてくれる?」と自分を殺して言い放ったスンミンを呆然と立ち尽くして見送った
ソヨンのシーンの次のカットは、ウェディングドレスの試着に来たのに新婦のことは問題外
で、自分がソヨンの初恋の相手だったと知っていまだに呆然としているスンミンの横顔。
だからキスの後は、監督、わざと暗転させた画面を入れてるわけです。
ここは、みなさん、想像してねという意図。ほかのシーンで暗転させてから次のシーンへ
という仕掛けはないようですから、あったのか、なかったのかはまったく闇の中。
あえて事実をはっきり探ろうとだなんて、そりゃ野暮ってもんで^^

まぁ、せめて一度だけでも、それだけの縁はあったと二人は確かめたいだろうと思います。
もう初恋の不器用さは卒業しているのが随所で描かれているし、それくらい、いいじゃない^^
(恋愛や性は年齢によって意味合いが違うって最初の方に書いてあったでしょ?^^)
実際のところは例によって映されないままで、なにもなく過ぎたのかもしれないけど。
とにかくもう、ナプトゥクの腕に抱かれて泣いたスンミンではないのです。

ソヨンにしたって、満たされない想いがあります。大学の時にはモレキスとか、線路遊びで勝って
なんども軽くたたくといった、もどかしい肉体の接触だったけれど、人間って、肉体と精神が
そろって初めて人間でしょう? 21世紀はLGBTQ+といった性のゆらぎの時代だけれど、
それでもまだストレート?な男女の方が圧倒的多数です。スンミンもソヨンも、その多数派です。
ソヨンとすれば、愛する男の女になりたい、というのはごく始原的な願望ではないでしょうか?
精神、想いといった見えないものではない、肉体で実感できるように、明確な事実を確定させたい。
もっとはっきり言うなら、生身の女性として、愛する男性の女になりたいという渇(かわ)き。
フィジカルなラヴアフェアを妨げるものはないはずです。まだ結婚してないもの、スンミンは。
一応、ギリギリセーフじゃないかなぁ? どうでしょう?

しょっぱいと言えば、しかしあれだけ海が近いと、ピアノの維持補修は大変です。
建築家として、そしてプロの仕事として、どうなんでしょう?^^:

映画のラスト。彼が設計したソヨンの新築の家に宅急便が届きます。
あの時、例の家に置いていった展覧会のCDとそのプレーヤーです。言葉はありません。
スンミンも結局、そのあとで、あの家に出かけていたことがソヨンにもわかります。
ああ、行ってくれてたんだ と、やっぱりというか、よかったというか・・・。
スンミンは、あんなに冷たく別れを言ったけど、心のどこかで、わたしへの想いを
まったく完全に捨て去ることなどできなかったんだナ、と・・・。

이적  イ・ジョク 오래전 그날 遠い昔のその日  原曲 윤종신 ユン・ジョンシン

CDは始め、家を建ててくれる契約金として、モレキスの日にスンミンに渡したものです。
そして別れを決意したスンミンから掲示板の前で返却されたものです。でも、ソヨンは
スンミンを信じて、まだ続けられると願っているメッセージを込めていたのでしょう。
この時だけを切り取るなら、この映画は初恋がどう失恋になったかという青春映画です。
ですが、ソヨンもスンミンも15年後のエンディングでは、失恋とか得恋など関係なくなっています。

契約金を預かったままだから、約束したから。結婚式は来月、フィアンセが
二階をつくる設計変更をしたら間に合わないと猛反対するのを押し切って、
本当に無理してソヨンが暮らす二階の部屋をつくります。
スンミンもこの程度にはフィアンセである女性に対応できるようになっているのです。
ただ本当のところは彼女、気が強そうだから、結婚後、どれくらいしたら
本性を現してくるか・・・・^^:
もしさらに20年後、スンミンもソヨンもフリーになっていたら、第三幕が
あがるかも。その時はきっと幸せになると二人は賢明かつ懸命に努力するはずです。

約束は果たしたから、契約は終わったから、今度は借りっぱなしになっていた
という存在にまで価値が下がったCDを持っている理由はありません。いや、結婚
するんだから、もう持っている資格はない。だからきれいさっぱり返却すべきだと、ソヨン
に送り返したのです。まったく男って、一見論理的に見える行動に、ついなっちゃいます、
(それに、下手をしたら妻に、こんな古いものって捨てられちゃうかも。もしソヨンのもの
だったなんてわかったら、叩き壊されかねない。やっぱり返すのがベストチョイスです)

この返却は、もう終わったんだ、戻れないんだというスンミンの意思の告白でもあります。
せめて1年、あと半年だけでも早く来てくれていたら、スンミンは受け入れられたのかも。
もしソヨンが離婚話で粘らず、早くスンミンの前に現れていたら・・・でも、粘ったおかげで
家が建てられたと言っていますから、やっぱりダメですねぇ。
スンミンには、ソヨンへの想いが募ってしまうのが、フィアンセの手前
誠意ある男性としての態度としてはありえないと理屈の上で馬鹿正直に考えるので
気持ち的には無理でも、15年前と同様、なんとしても頭で理解して決然と返却するのです。

でももう時間は取り戻せない。特にスンミンは結婚がきまっていて、それが重大な障害です。
ソヨンは離婚したから、あの気持ちを思い出してスンミンを尋ね、できればスンミンと人生の
再出発を願いたい気持ちがあったのかもでしょうが。でなけりゃ、ネクタイは買わないでしょう。
わたしたち、あのときの、初恋の気持ちに戻りましょうか? というお誘い・・・。

でも、かつて一度は交わったかに思えた時間軸は、もうずれているのです。
往事渺茫(おうじびょうぼう)。スンミンは心を残しながらも、借りたまま?に
なっているCDを返送(ちゃんとなくさずに持っていた)し、結婚したばかりの
女性と渡米する飛行機の中で、彼女の甘えを許す現実を受け止めるしかない。
現実を受け止めるしかないとわかっていて、どこか、想いはソヨンのことに戻って
しまっているようですが。フランスではこんなとき C’est la vie セ・ラ・ヴィ って
言いますね。それが人生だって。(「シェルブールの雨傘」のあのエンディング!)

プレーヤーはスンミンがちゃんと新しい乾電池に変えたのでしょう。今度は
スンミンが時間を現代によみがえらせる仕掛けをしたことになります。(以前は、
ソヨンが時計のネジを巻いて、あの家の時間を現在形に戻していました)
ソヨン(ハン・ガイン)が聴き始めると、CDとソヨンには、過去となって
いた時間が現在形の時間としてよみがえります。
あの時、イヤフォンを分け合って二人で聴いた「記憶の習作」を、ソヨンは今
イヤフォンを2つとも耳にはめて、ひとりで聴くのです。
大人になったソヨンは、スンミンが設計・施工した家の壁一面に広く取られた明るい
窓から外を見上げます。届いたばかりのCDで思い出深い曲を聴きながら。
この上ない胸のときめきと歓喜。苦しみ、悲しみ、そして悔(くや)しみとなった初恋。

スンミンとのことは今はもう、海の向こうのあの高く青い空のように遠いものに・・・。。
ソヨンは今度こそ、終わったと実感していることでしょう。
ついに初恋を手放すときが来たのです。ひとりとなって。それなりに納得して。
今となってはいとおしい自分とスンミンの若かった日々を、それでもちょっとだけ
ほんのちょっとだけ、ほほえみを添えて送り出すのです、

二人が20歳だったこと。二人が実は好き同士、初恋同士だったこと。二人とも
胸の奥に初恋をしまい続けて、大事なところで似ていたこと。誠実だったということ。
手放すまで15年がかかったこと。いとおしい二人の青春だったということ・・・。

・・・ソヨン。再出発しなくちゃね。ファイティン!(見てる方は涙。涙なんだけどね)
(結局、勇気を出して確かめることが大事、肝心なときの沈黙はダメ、男にも女にも
という苦い教訓です)
スンミン、15年後の真実にボーゼンとしちゃってるし、まだまだ宿題が解けそうに
ないけど、それでもまだ幸せなのじゃないかな?そんなにも思い続けることができる
ソヨンと出会い、初恋と思ってもらえた男の子だったという事実があるのだから^^:

Brown Eyed Soul    My Story

さすがに女性の勘は鋭い、こと恋愛に関しては。フィアンセは、大学1年の時にスンミン
がした初恋の相手は、ソヨンではないかと疑って尋ねます?社内の誰も知らない仲だけど
ソヨンにだけは知らせておこう、なんて「オンニ(お姉さん)」と親しく呼びかけながら
ちゃんとクギをさしているのです。今、スンミンはわたしのものという主張。
いまさらしゃしゃり出て邪魔しないでくれる?ということです。
彼女の直感は正しい。結婚後のスンミンに、ソヨンの影が差すようになるのです。
それとも、スンミンは上手に処理して、せっかく築いた家庭を大事に守れるでしょうか?

若いときのソヨンとスンミンだけを描いていたら初恋の受傷の物語。でも大人になって
それなりに世慣れた二人の再会は、初恋が過去のものとなっていく様子までを描いた物語。
なるほど韓国社会で初恋ブームが起きるはずです。
・・・しかし「華麗なる賭け」(主演:スティーヴ・マックィーン、フェイ・ダナウェイ)や
「追憶」同様、勝者なき恋愛という構図の映画が、どうも舎人がこだわっちゃうやパターンで^^:

以前、映画は感動を与える作品が高い評価を受けていました。現在では、そんなものより
快感の方がヒットに結び付きます。「感」違いです。舎人などは、つい底の浅い映画
なんて思ってしまいますが、もう時代遅れなのかも。若い世代は、感動はいいとしても
そこに至るまでが重くてカッタルイならもう拒絶反応なのでしょう。でも、韓国ではまだまだ
感動が正直にヒットにつながります。歌でも暗い歌が大ヒットしたりします。そうした感性の
面の分厚さで、日本は韓国に負けます。しかも若者向けの音楽でもBTSとか、日本は全然敵わない。

エンドロールで流れるのは展覧会の「記憶の習作」です。
ソヨンとスンミンの初恋は、大人になる前の習作だったのですね。
この映画のストーリーのコンセプトにすら影響していたかも
と思えるほどピッタリの歌詞であり、重いながらも熱く烈(はげ)しい
いかにもキム・ドンリュルらしい曲です。
(このCD、持っています^^  最初、当時は韓国語って全然だったから
意味がわからず、なんか重ったい曲だなぁなんて思ってた)

でも大人になった彼(オム・テウン)、ちょっとしゃべりすぎだと思うんだけど。
たばこなんかスパスパやっちゃって、大学1年の時のむせていた面影なんかありゃしない。
そのちょっと軽薄な軽口も、社会人として生きる術(すべ)。
15年が与えた変化のひとつなんですね。まぁ、納得しましょう。

さらに、しかし・・・大人になりかけの、まだ子供のみずみずしさもたたえた
僅かな時間に訪れる女性の微妙な美しさですねェ、このころのスジって。

そしてハン・ガインも表情演技とか優れていましたねぇ、何度もみることができます。
素材としての良さがピタリだったスジとは、さすがに経験が違いました。
しかし、ハン・ガイン、初恋の相手がハハだなんて本当にホンマでっか?とビックリ。
確かに涙まじりにハハの首に抱き着いていたけどサ~。もちろん、BGMは「記憶の習作」
でした。それと別のバラエティ番組では「また生まれたら、同じ男性(俳優)と結婚
しますか?」という問いかけに、言葉をためらってしまいます。ちょっと間を置いて
「今度生まれたら、別の人と。また次に生まれたらさらに別の人とでいいんじゃない_」
と存外な答えでした。まぁ、ねぇ・・・。現在の結婚生活に特に大きな不満もないよう
でしたが。

オム・テウンも、よく見れば好演です。ちょっと軽薄すぎるような感じが、大学1年
のときと違い過ぎただけで。でもちゃんと、見せ場をつくっていました。
彼のお陰でここまでの作品になったとも言えます。

ナプトゥク役のチョ・ジョンソクは実年齢の年上感が出てるけど、同級生より大人に
なるのが早いという点では合格です。浪人になったのが悔しくて受験勉強に打ち込めず
つい女の子たちに注意がいっちゃうのは、納得(ナプトゥク)できるような、できないような^^
話題となったキスの説明は彼のアイデアだったそうで^^

エピトーン・プロジェクトのヴィデオクリップは一端、終わりそうになってまた始まります。
ある種の男の子にとって、初恋は途切れそうに見えて実はいつまでも続くものなのだから。
では全訳です。

初めて君に会ったその瞬間
息を飲んだ記憶
もしかして君が聞いたみたい
知られたみたいって
気をもんだ日を覚えてる

★舎人独言にどんな音楽がある?を探す
ミュージックリスト(目次.クリックできます)はこちら。

君ってホントに声が素敵だった
一緒に歩く時はもっと素敵だった
そう そんな時があったんだ
胸がしびれるくらい愛した日があったんだ

君はぼくには毎日 初恋
春の雪が降るみたいに そんな風に ぼくは待って
ときめいたその日も 酔ったその夜も
心はただならない 風が吹きつければ

君はぼくには毎日 初恋
春の雪が降るみたいに そんな風に ぼくは待って
悲しくて泣いたその日も 自信がぐらついた夜も
心はただならない 風が吹きつければ 今も変わらずに

時に愛はホントに孤独で
そう 生きるっていつも厳しい
わかってる ぼくたちが一緒にいた日なんだ
胸がしびれるくらい愛した日があったんだ

君はぼくには毎日 初恋
春の雪が降るみたいに そんな風に ぼくは待って
ときめいたその日も 酔ったその夜も
心はただならない 風が吹きつければ

君はぼくには毎日 初恋
春の雪が降るみたいに そんな風に ぼくは待って
悲しくて泣いたその日も 自信がぐらついた夜も
心はただならない 風が吹きつければ 今も変わらずに

無断転載はご容赦ください。リンクはフリーです。

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舎人独言には
★エロスに変容するバラの寓意
★ノートルダム大聖堂の聖なる秘数
★オパキャマラドの風景
★映画「華麗なる賭け」チェスシーンのセクシーの秘密
★名盤「クリムゾン・キングの宮殿」の実在のモデル発見
★映画「男と女」サンバ・サラヴァの謎

といった解読シリーズがあります。

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